小さなお話シリーズ9部作

「刹那ビート」

山兎一羽

夜山野に出歩けば

森の闇にただならぬ気配

光る眼八つ闇に漂い

瞬きの次の

瞬間

アルルっ!

狼四頭投げ出でて

 確かな速度で走り出す

と同時に

 兎

 跳ね上げ我武者羅時超える

 カッ ドン カッ ドンドン カッ ドンカッ ドンドンカッ

 時間の流れは鈍化して

兎は

見上げる雁渡り

 星を飛び行く魂渡り

 行く手に崖の切り崩し

 はたしてこの期の結末や

 銀河の民の物語





 「クリスタライザー」

 緑に輝く剣を左手にかかげ

魂の主

勇敢なる永遠の向こう見ず。

 渦巻く龍の鼓動を右手に広げ

心の主

コンクリの鳥を羽ばたかす。

 遮る者は打ち抜いて

目にも留まらず

やってくる

一、  二の三の二の四の五

二の四の六の八の二の四の五





 「荒野№8」

 弾丸が飛び

 時間が曲がり

 煙があがり

 音も無く

 野放し名無しの風使い

 右目の奥には

 闇のぞく。

 手放し風に跨って

 荒野に風の着地点

 知らぬが仏の往生際

 的を撃ち抜く

 死の弾丸

 ボーボボボーボボ

 逃げる水





 「音翁」

 嵐の中の静けさの中の音に乗って

 一人のさすらい

 見渡す目線は矢の様に

 内から外へ

 年月を重ねて風と同じに

 声と星が兄弟であるのと同じに

 今は昔に





 「魔神転生」

  魔神がウーと息をはく

夕方

子供が夕日に泣いた

からすは3羽

空染まる

ゆうやけこやけの

あの時間

 煙草に火をつける人

そこに宿る

煙の踊り

刃物が何かを削る音

そこに宿る

魔神の歌

柿の実

犬の遠吠え

魔神の顔





 「海底神秘」

 青く澄む

 海に潜る

 グイグイ潜る

 夢の底

 深海3800メートル地点

迫りくる

そびえる

巨大な黒い影

 見ればそれは

 ピラミッド

 青い光の水世界

 海底に立ち

見上げてる

忘れ去られた超古代

 物云うは無く

ただそこに

直立

三体のスフィンクス

 どこかの海に人知れず

消えゆく定め

海の藻屑

 時の止まった

 ちりぬるをわか

 思いをよそに

 赤魚





「不知火勇者」

 山が燃えていた

 森の生き物たちは皆

我先にと逃げ惑う火の修羅場

 そこに一人

近くの水場から

その小さなくちばしで

ほんのわずかな水滴を吸い上げては

猛威を振るう山火事に

水滴落とし火を消そうと飛ぶ

ハチドリがいた。

 それを見た他の生き物たちは

 「そんな事をして何になる?そんな事をしても火は消えない」

 と口々に云うばかりだが

 ハチドリは皆にこう言い放った。

 「私は、私に出来る事をしているだけ」

 さて

その後、その山火事がどうなったのか?

 それは

 あなたが知っている





「夢次元FLIGHT」

  見渡す限り地平線

広がる草原ホライズン

 竜巻昇るを

遠く見て

 こっちへおいでと誘えば

 竜巻こちらへやってくる

 じわりじわりと近づいて

虹屑巻き上げやってくる

 迷わずその中飛び込めば

 あなたは鷲の姿に成る

 鷲のあなたは

羽広げ

 いつかの銀河に星を飛ぶ

 七色光のその翼

 それがあなたの

 夢姿

 風を捕まえ飛ぶが良い





「虹蛇伝説」

今は昔

世界の真ん中に

聖なる山がありました

ある時

その聖なる山の頂で

二匹の蛇が

踊る様に戦い

戦う様に踊りました。